ドットピッチとは、正しくはドットの中心から次のドットの中心までの距離ですが、1 dotの面の1辺の長さ(mm/dot)と考えても同じことになります。
現在主流の液晶モニタは、液晶パネルの製造元や型番によって様々ですが、デスクトップ用パネルなら大体0.25〜0.28 mmのピッチ(間隔)で画素(ドット)が並んでいます。
同じ製品であればドットピッチに個体差はなく、ビデオカードやアナログ/DVI接続に関わらず必ず固定値になります。これはApple社製のモニタでも同じで、同じ製品であればOSを問わずスクリーンdpiは必ず固定値になるという事です。
最大画素数が1920*1200 dotのモニタの場合は対角が26.742インチを超える機種ではドットピッチが0.3 mm以上になります(0.3mmを超えると人の目には粒が目立って見えるらしい)。
0.3 / (16 * (16@ + 10@)i@r * 25.4 * 1920r) = 26.741993... inch
(式はWindowsの関数電卓にペースト可能な形式で書いています)
ノートPC用パネルになるともっと細かくて、現在、対角15.4インチで1920*1200 dot表示可能という非常に高密度なモデルも出ていますから、仕様表を見ていないのでやや不正確ですが、単純計算するとそのドットピッチは約0.17 mmになります。
15.4 * (16 * (16@ + 10@)i@r * 25.4 * 1920r) = 0.17276... mm
CRTはその構造上、必ずしもカタログ値通りの対角インチ数の表示寸法にならないのですが、家にあった17インチCRTは表示寸法 = 320*240 mmで調整してあり、その対角は
(320@ + 240@)i@ / 25.4 = 15.748... inch
でした(液晶モニタの場合はカタログ表記のインチ数とほぼ一致します)。
その調整値でドットピッチを割り出してみると、メーカー推奨画素数(1024*768 dot)では0.3125 mmとなり、数字の上では画像が荒く表示されることなりますが、実際にはドットピッチ0.27 mmの液晶と比較すると、むしろCRTの方が緻密な表示に見えます(経年変化で発色はボロボロですが)。
液晶パネルを虫眼鏡で拡大して見ると、上の模式図のようにRGBそれぞれのブラインドの間に黒い隙間があるはずです。
液晶は目を凝らして見ればドットの粒が肉眼でも確認できる通り、この隙間がドットピッチ以上の目の粗さとして現れてしまうのです。
時として、あるいはモニタを買って最初からこのブラインドが開かなかったり、開きっぱなしになって元に戻らなくなる事があり、これが所謂ドット欠けまたは常時点灯です。
CRTには構造上このブラインドや隙間が無いので、ドットピッチ(そもそもCRTにはドットピッチという概念が無いので解像度で表記されることになる)が多少広くても、液晶のように荒い表示にはならないわけです。
有機ELもいいけどFEDの開発はどうなっているのやら。
PC雑誌や掲示板の情報などを見ると、とかく液晶の応答速度ばかりが取り立たされていて、肝心のドットピッチが蔑ろにされているような気がしてなりません(動画をPCで観るのが当たり前になった昨今、当然の成り行きかもしれませんが)。
もっとも大型液晶のドットピッチをこれ以上縮めるのは、現在の技術では難しい、というか無理だから、そんな話をしても仕方が無いのかもしれませんね。
話が逸れてきたので戻します。ドットピッチが0.27 mmのモニタなら、1*1 pixelの画像をピクセル等倍したときの1辺の見た目の長さが0.27 mmということです。
そうして考えてみると、製図用0.3 mmのシャープペンの芯は見ようによっては随分太いし、それで引いた線やペンで引いた線は0.3 mmよりもずっと細く引けるわけですから、PCのモニタはまだまだ原寸表示出来るレベルに達していないと言えます。
たとえば1200dpiで印刷されたラスタデータの印刷物を、同じクオリティでモニタに原寸表示するためには、スクリーンdpiも1200dpi必要になるということです。これをドットピッチに換算すると約0.021 mmになり、現在のドットピッチでは遠く及ばないことが分かります(カラー原稿で問題ないとされる350dpiですら約0.0726 mm/dot必要)。
漫画原稿でよく使用される網点も、原寸表示にするとモアレが出てしまって、まるで参考にならない場合が殆どです。異なる線数の網点を重ね貼りするとモアレが出るように、これもモニタのドットピッチと網点のピッチ(網点ドット)が合わないために互いが干渉して起こる現象です。ちなみにCRTはモニタ本体でモアレ調整を行える機種があります。
ドットピッチはメーカーサイトやモニタ付属のpdfマニュアルなどに記載されていますが、見つからない場合は自分で求める事もできます。
画面の表示領域の寸法を信頼できるメジャーで計測し、例えば計測した幅が518.4 mmでモニタ画素数Xが1920 dotだった場合は、518.4 mmの中に1920個ドットがあるわけですから単純に割り算して
518.4/1920 = 0.270 mm
と分かります。
液晶モニタのメーカー推奨解像度とは、このドットを全て使い切るモニタ画素数になっているはずで、例えば推奨解像度1600*1200 dotのモニタのモニタ画素数を800*600 dotに設定して、スクリーンモードをフルスクリーンに設定(これは通常モニタ本体側で設定する)すると、ドット1つで表示できるピクセルを4つ使って表示するようになるので、全ての表示は荒くギザギザした表示になります。これはWindowsをセーフモードで起動したときにも同じようになります。
もし、メーカー推奨解像度以外の設定にしていて、縦横のドットピッチが等しくならない場合は、正方形が長方形に、円が楕円になって表示されている状態になっているので、特別な理由がなければ画面のプロパティまたはビデオカードドライバのユーティリティを使用して正しく合わせるべきです。
特に対角19インチでSXGA推奨と書かれたモニタは、X:Y比が5:4で他の規格と異なる(ワイド液晶を除く)ため、例えば『17インチから19インチに買い換えたが表示が小さくて見づらいから、今まで通りモニタ画素数を1024*768 dotに設定した』と言うようなケースで、そのモニタがアスペクト比無視で全画面表示するタイプの物だった場合、全ての表示は125%縦に引き伸ばされて表示されてしまいます。
ドットは縮んだりしないので横に縮まる事はありませんが、画像やフォントを含むあらゆる表示の上辺と下辺が滲んだような表示になってしまいます。
※SXGA規格は1280*1024 dotでX:Y比 = 5:4 ですが、SXGA+規格のモニタなら1400*1050 dotでX:Y比 = 4:3なのでアスペクト比無視で1024*768 dotに設定してフルスクリーン表示しても縦横比は崩れません。ただしその場合でも、画像のピクセルとモニタのドットが一致しなくなるので表示品質は著しく下がります。
なおCRTモニタの場合は、液晶モニタと像の表示原理が全く違うため、対応範囲内であればメーカー推奨以上の値にモニタ画素数を設定する事ができます。またCRTは異なるモニタ画素数に設定しても、GUIやフォントサイズは変化しますが画像データのピクセルとモニタの(理論上の)ドットは常に一致するので、モニタ本体の調整が正しければ縦横比が崩れることはありません(見かけのサイズは変わります。またドライバ側で詳細な調整を行わないと像が滲んだりちらつきが発生します)。
例外として、CRTでもモニタの縦横比と一致しない壁紙を拡大して表示する設定をした場合は壁紙の縦横比が崩れます。